たわごと その13

シゲボンのSEVEN

その日の朝、出勤した私が店に入っていくと店の奥のメンテナンスエリアに、何やら大きなボックスが置いてあった。
動線上にモノ置くなっちゅうの、と思いつつ、私はつい習性でそのボックスの送付伝票とボックスのラベルを見た。
「オ〜ッ!シゲボン!これSEVENのフレームじゃん!」
するとシゲボン、おもむろにボックスに近づいて口を開いた。

「そ〜なんですよぉ!来ちゃったんですよぉ。僕のSEVEN!」

ウォ〜ッなんてワザトラシイ奴なんじゃ!こいつは!
いつも、私が店に来る頃には
興味のある荷物は開梱しとるやんけ!(私の心の雄叫び)
「いや〜まいっちゃったなうれしいな♪ 検品しちゃおうかな♪」
普段は段ボール内のパッキングはバリバリと投げ捨てるシゲボンが、まるで遺跡の発掘調査のように、丸められた英字新聞をひとつひとつ丁寧に取り出していく。
しかも、たまにわざとらしくその新聞を開いちゃったりして
「あっこれって向こうのマーケットのセールのちらしかな〜・・」なんて、意味もなく引っぱる、引っぱる・・。
そして普段の、
約100倍の時間をかけてシゲボンは、後生大事そうに夢にまで見た(であろう)SEVEN sola のフレームを取り出した。

シゲボン最愛(明美ちゃんの次にね!)のYETI・ ARCのシートチューブにクラックが見かり、シゲボンが涙に暮れたのが去年の10月下旬。
彼はその後、時期主力戦闘機の選択に頭を痛め、(私にそそのかされたのもあるが)どうせ買うなら究極のクロカンバイクということで、11月中旬にSEVENのsolaをフルオーダーする事に決定した。が、いかんせんSEVENは非常に高価である。この時点で、年明けに入籍予定の彼女にどうすれば、このバイクを買うことを了承してもらえるか?という、SEVENの購入代金を用意するよりも大きな壁が、デデ〜ンと立ちはだかった。
それからしばらくの間、シゲボンは無い頭をしぼりその大きな壁を突破する方法を考えた。

作戦その1:購入後、秘密裏に組み上げ、ある日突然デビューさせ「ごめ〜ん買っちゃっ
たコレ!エヘヘ〜」という、事後承諾作戦・・・=

作戦その2:購入後、秘密裏に組み上げ、ある日突然デビューさせ「いや〜俺、今年から
突然 A&Fのサポートライダーになっちゃってサ!」という、偽サポートラ
イダー作戦・・・=

結局、真珠湾攻撃の様な奇襲攻撃は非常にリスキィー、と気がついたシゲボンが考えついた
最終攻撃方法、
「ボ、僕のおこずかいの範囲で自転車買ってイイ?」
スッゴイ正攻法である。この方法はある意味、母性本能をくすぐりつつスキのない素晴らしい攻撃方法であった。当然、結果は「オーケー!」
私達はこの攻撃方法のコード名を映画「Six sense」にあやかり
「Sixty month」と呼ぶことにした。(全然関連してねーじゃねぇか!)
でも、こずかいから払うとはいえ、60ヶ月払いは長いよなぁ〜・・・

SOLA のヘッドチューブ、ヘッドマークはチタン製の抜き文字プレート。これ単体だけでもキーホルダーとして売っている。気の早いシゲボンはヘッドセットだけ先に付けてしまった。 SOLAの美しいリアバック部、チューブの絞り込みがとってもセクシー。
エンド部にはディスクブレーキの台座と、指定したケーブルガイドが付いている。
SEVENのカタログとオーダーフォーム。ステムはフレームと同時にオーダーしたチタンステム。カードにはフレームのジオメトリーと、このフレームの製作に関わったスタッフのサインが書いてある。

それから少し経った12月の初め、シゲボンは一生懸命SEVENのオーダーシートにかぶりついてい
た。私が、アメリカから持ち帰ったSEVENのカタログに付いていたオーダーフォーム(当然英文)を必死に訳しながら、あーでもない、こーでもない、これはいったいどういう意味ッスかね?と涙ぐましいほどの姿で、オーダーフォームと格闘していたのである。

SEVENのオーダーシートは非常に細かい。自分の今乗っているバイクのジオメトリー、自分の体型の測定、自分のライディング習慣、オーダーするフレームの使い方や、ケーブルの取り回し方、ハンドリング特性等実にいろいろな項目に渡って記入しなければならない。
それらの質問を英文から理解し、データを埋めていくのは非常に大変である。
シゲボンはついに行き詰まり(私も行き詰まったので)輸入元のA&Fの担当者にオーダーフォームの内容について電話で質問した。

担当  「いやーそうですか、そりゃぁ大変でしたね。でも、日本語のオーダーフォーム有る
の知ってました?」
シゲボン「・・・・・・・・」
大きな壁を越えたシゲボンは粘り強かった。そんな些細なことにはビクともせずに、きっちりオーダーフォームを完成させ、A&Fへファックスしたのであった。

その後、そのフレームが来る間、彼が日々なめるように繰り返しページをめくったためにSEVENのカタログとSEVENが載っているA&Fのカタログがボロボロになってしまったのはいうまでもない。

トップチューブに貼られた”BON”のネーム。目立たないけど、フレームでカールと同色のネームはかなり自己満足度を満たしてくれる。

シートチューブ内には補強のカーボン
スリーブが圧入されている。
とにかく、フレーム各部の溶接の美しさは最高!



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